死亡率はどちらが低い?炭水化物を多くとる人 vs.少なくとる人

【結論】炭水化物を多くとる人と少なくとる人の両方が死亡率が高くなります。

2018年にLancet Public Healthに載った論文を紹介します。前向きコホート研究とメタアナリシスが盛り合されていて、お腹いっぱいになる論文です。

Sara B Seidelmann, et al. Dietary Carbohydrate Intake and Mortality: A Prospective Cohort Study and Meta-Analysis. Lancet Public Health 3(9):e419-e428, 2018

【コホート研究】

コホート研究は、アメリカの4つのコミュニティで1987年から始められました。

45-64歳の15428名を、中央値で25年間追跡して、その間の死亡数は6283でした。

追跡期間中に2回食物摂取頻度調査をおこなって、参加者の炭水化物摂取割合を算出し、死亡との関連性を調べました。

15428名を均等の人数になるように、炭水化物量別に5グループに分けました。

炭水化物からのエネルギー摂取が低いグループの参加開始時点の特徴には次のようなが多いという結果でした。

  • 若年
  • 男性
  • 黒人以外の人種
  • 大学卒業
  • 高BMI
  • 余暇での運動が少ない
  • 世帯収入が高い
  • 喫煙
  • 糖尿病が多かった

高学歴、高収入で忙しく仕事をしていて太っているイメージ。炭水化物を減らすと食費がかかりますが、それもクリアできる人たちのようです。

炭水化物摂取量別にグループわけすると、社会経済的要因による差が浮かび上がってきます(炭水化物は安くてお腹がいっぱいになる)。

次に、炭水化物からのエネルギー摂取の割合を横軸に、死亡のハザード比を縦軸にグラフをかくと、U字型のカーブを描きました。

つまり、炭水化物が少ない人と多い人が死亡のリスクが高く、最もリスクが低いのは、炭水化物からのエネルギー摂取量が50-55%でした。

【メタアナリシス】

さらに、筆者らは世界中のコホート研究をまとめてメタアナリシスをしています。

そこでも低炭水化物と高炭水化物は死亡リスクが高い結果が出ています。

解析で工夫されているのは、平均的な炭水化物摂取量の少ない北米・ヨーロッパ(平均50%以下)と、炭水化物摂取量の多いアジア・低所得国(平均60%以上)にわけているところです。

また、炭水化物が減った分、動物性のたんぱく質・脂質を増やすと死亡リスクが上がるが、炭水化物を減らした分植物性のたんぱく質・脂質を増やすと死亡リスクが下がることをきれいに示しています。

■まとめ

炭水化物の摂取量は、地理的要因や社会経済的要因が関係します。

よって炭水化物の摂取量と健康(死亡)の関係をみるときには、食事以外の要因がその結果に関わってくることがあることに改めて気づける論文です。

また、炭水化物50-55%が最も死亡率が低いとの結果でしたが、もともと高炭水化物食をとっていて、魚や植物性のたんぱく質・脂質を多くとる日本のような国々でも同じように考えることができるのかどうかは不明です。

メタアナリシスに日本の研究も採用されていてうれしかったですが、さらに検討がすすめばいいですね。