糖尿病「食品交換表」の未来ー難しさと調理ばなれ

糖尿病の栄養指導があるので、病院の売店かお近くの本屋さんで「食品交換表」を買っておいてくださいね。

と決まり文句のように患者さんに伝える時代は過ぎ去ったのでしょうか?

糖尿病学会がまとめた報告を紹介します

「食品交換表」編集委員会報告~アンケート調査からみた「食品交換表」の現状と課題~(⇒ここをクリック)

アンケートの対象は医師と管理栄養士合計341名(ほぼ同数)でした。

●食品交換表 第7版を「必ず使用する」「よく使用する」は約6割

「食品交換表」離れの理由①難しさ

●食品交換表 第7版を「あまり使用しない」「全く使用しない」約4割の理由は、

患者が理解できないと思う、以前に使用したが理解してもらえなかった、使用したが患者が活用しなかった、説明するには指導時間が短すぎるー

という「難解さ」を挙げたのが約6割でした。

糖尿病患者さんも高齢化し、交換表の仕組みや計算方法を理解することが難しい場合が増えていると考えられます。

「食品交換表」離れの理由②調理をせず、中食・外食を利用

もう一つの重要な理由が、「患者が調理しない」(12.4%)

中食・外食の利用が主で、食材から料理を作るということをしない患者さんにとって、「食材を交換する」という食品交換表は活用しにくいです。

食事療法における課題についての設問では

●調理する習慣がない、調理技術の低下のために家庭で調理を(しなく/できなく)なった方の割合が「多い」「とても多い」合わせて、8割以上

●中食・外食・コンビニ利用者の割合「多い」「とても多い」が9割以上

となっていました。

調理済み食品を組み合わせて、摂取エネルギーや栄養素バランスをとる方法を指導する技術が求められていることがわかります。

まとめ

食品交換表は難しいし、そもそも料理をしない対象者には使えない。だから、より簡易で、中食・外食に関する情報を視覚的に伝える教材が必要だということがわかります。

私は小児病院で糖尿病の指導をしていたこともあり、指導対象者は患児の20代、30代の保護者でした。ゆえに、理解してもらうのが難しいと感じたことはあまりなく、患児が小学生高学年くらいになると、本人に交換表を理解して、献立作成もしてもらっていました。

長年食事療法を続けていくと、指示内容を守れない時もあるかとは思いますが、食事療法の開始時にしっかりと食品構成のバランスと重量の感覚をつかんでおくことで、大きな乱れは防げるなという印象があります。

食品交換表を難しいと感じるかどうかは、患者さんの食環境や食事療法に対する意欲も関係しますので、それらの条件が整っている方に対しては、食事の基本をしっかり教えることのできる「食品交換表」がオプションの一つとしてあり続けてほしいと考えています。