炭水化物を制限したときの「おかず」が重要です

炭水化物制限という言葉にも新鮮味を感じないくらい浸透しました。20世紀の最後の20年くらい、アメリカは低脂質食が一大ブームとなりましたが、21世紀に入って低炭水化物食に関心が移りました。日本では、元々脂質摂取量がそれほど多くなく、アメリカのような大々的な低脂質食キャンペーンが行われていたわけではないので、脂質制限から炭水化物制限へのギアチェンジというのは実感がないと思います。

しかし、日本食は高炭水化物食になりがちなので、炭水化物制限というのはインパクトが大きく、また生活の中にも取り入れやすいため、人々の関心を引いたのでしょう。夕食だけご飯を抜く、といったマイルドな炭水化物制限をされている方も多いのではないでしょうか。

私は、5年ほど前から、糖尿病食事療法においてどの程度の炭水化物を摂るのがよいのかについて、科学研究費の助成を受けながら研究しています。日本人が平均的に摂取している食事(炭水化物が総エネルギーの約60%)と低炭水化物(炭水化物が総エネルギーの30%)を朝食として食べたあとの血糖値を調べたところ、低炭水化物食の方が低い結果になりました。血糖値に最も影響を与えるのは炭水化物量ですから、予想通りの結果です。

しかし、同じ昼食を食べた後の血糖値は、平均的な食事に比べて低炭水化物食の方が高かったのです。それには、低炭水化物食に含まれる多くの脂質が影響していることが考えられました。(「低炭水化物食がセカンドミール後の血糖反応に及ぼす影響」)

https://www.ishiyaku.co.jp/magazines/practice/PracticeBookDetail.aspx?BC=003503

そこで、次の研究では、低炭水化物食を2種類設定しました。脂質が多くなった低炭水化物食と、脂質量は平均的な食事と同等にしたものです。2種類とも食後の血糖値は平均的な食事に比べて低くなりましたが、同じ昼食を食べたあとの血糖値は、脂質の多い低炭水化物食のみで高くなりました。脂質の多い食事を朝食に食べると、昼食前の血中遊離脂肪酸濃度が高くなり、それがインスリンの作用を悪くし、インスリンがたくさん分泌されているのに血糖値が高いという状態を引き起こしていることが血液検査からわかったのです。(「若年女性において低炭水化物食に伴う高脂質摂取はセカンドミール後のインスリン抵抗性を惹起する」)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/61/10/61_678/_article/-char/ja

炭水化物量を減らして直後の血糖値を抑えられたとしても、脂質が増えることで次の食事後の血糖値を上げてしまうことがわかりました。炭水化物量を減らすだけでなく、おかずにどのようなものを食べるかについても、考える必要があるようです。