新型コロナ療養ホテルのお弁当は感染症患者に適切か?

日本臨床栄養代謝学会(JSPEN, 旧静脈経腸栄養学会)は、2020年4月10日「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療と予防に関する栄養学的提言」を発表しました。

栄養評価の実施が重要であること、また低栄養は重症化のリスク因子になりうるとして、NST(栄養サポートチーム)の活動が必要であると強調しています。

新型コロナウィル感染症で身体への強い侵襲が加わった時には、エネルギー消費の亢進と体タンパクの異化(体内のタンパク質が分解されて消費されること)が起きることが考えられます。しかし、その分、多量のエネルギーとたんぱく質を投与しようとしても、急性期の身体は多量のエネルギーやたんぱく質をうまく利用できず、高血糖などの悪影響につながる可能性があります。全身状態や循環動態の改善が得られてから、十分なエネルギーやたんぱく質を投与することが推奨されます。

そのため、重症化する前から栄養管理をしていくことが重要であり、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療と予防に関する栄養学的提言」のなかでも、繰り返し説明しています。

軽症で早急に回復が見込めるとのことで、入院後長期にわたって栄養補給を怠ったり、長期の絶食をそのまま放置すると、免疫能の低下以外にも種々の合併症を発症し、ADL(日常生活動作能力)の低下をきたすので注意が必要である。

軽い症状でも持続して経口摂取が不良なまま、さらに数日が過ぎ体重減少や骨格筋量や筋力の減少をきたしてしまうことが少なくない。

早期の病状改善による経口摂取の回復を期待していたところ、病状の回復が得られず、逆に急激に憎悪することもあり、そのような状態では十分な栄養管理が実施できないこともある。

新型コロナウィルスに感染した軽症者は、ホテルなどでの宿泊療養や自宅での療養をされています。

宿泊療養を体験した方が、提供されたお弁当をネット上で紹介しています。いくつか見ただけですので、全てが同じ状況とは限りませんが、ホテル近くのお弁当屋さんや仕出し屋さんが用意したお弁当とお茶を時間になると、ロビーに受け取りに行くそうです。5月21日付けの日本経済新聞には、週1回のお菓子の差し入れがあると書いてありました。

ネット上で紹介されているお弁当は、おにぎり弁当であったり、塩鮭とコロッケがメインのお弁当などで、たんぱく質やビタミン、ミネラルが多いとは思えないものでした。しかも、体調が悪い時に、揚げ物のおかずは適切なのか疑問に思いました。

予算や運営上、今できる最大限のことをされているのだと思いますが、今後は、より栄養面に配慮したお弁当を提供したり、必要に応じて栄養補助食品などを支給することが必要になるではないでしょうか。

栄養状態の維持は、重症化予防や早期回復につながる可能性があるため、必ず必要な対応だと思います。