食生活格差 カップ麺と小松菜1束どちらを買うか?
このところ格差についての話題がとりあげられることが増えています。
いわゆる経済的な格差だけでなく、学歴格差、家族格差、健康格差など様々な切り口があります。
ちょうど『未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか(PHP研究所、2018年)』という本を読み、改めて食事・食生活の格差について考えました。
経済の状況と食生活の関連
もちろん、食生活は生活の一部ですから生活経済の状況に関係します。健康的な食生活に推奨される野菜や果物、魚介類は価格が高めです。菓子パンやカップ麺を買えば、100円程度でそれなりにお腹が満たされ、おいしさを味わえるのに対して、小松菜1束を100円で買ったところで、お腹も心も満たされません。つまり、主食に魚や野菜を組み合わせる健康的な食事をとろうとすれば、1食あたり300~400円はかかるでしょう。
しかし、問題は食材料の価格だけではないのです。食事を整えようとすれば、献立を考え材料を購入し調理する、さらに片付けるーという一連の流れが必要です。これには時間も労力も知識・技術も使いますので、これを全て捻出することは簡単ではないのです。
アメリカと日本で行われる食生活調査研究
例として、アメリカでおこなわれる食事に関する研究では、どのような人たちに対して食事調査をしたのかを示す「対象者の特性」の情報の中に、人種や最終学歴、所得などが含まれます。多様性の高いアメリカでは、このようなことを明らかにして、対象者の特性をつかむことにより、食生活の結果をより正しく解釈しようとしています。
一方、日本では単一民族国家であり、総中流社会といわれてきました。そのため、研究調査対象者の人種を調べる必要はないですし、所得なども大きな隔たりがないものとして明らかにしないことが一般的です(プライバシーな情報を調べにくいという国民性という事情もあります)。
しかし、昨今、日本でも貧困問題が指摘されることも多くなってきたことから、対象者の特性をより詳しく調べることが必要になってくるかもしれません。
食生活に対する意識の格差
ネット上には食事の情報があふれていますし、本屋に行けば、健康的でおいしい食生活のための美しい本がたくさん並んでいます。コロナ禍により健康意識が高まり食生活を大切にする人が増えたといわれていることを反映しているものと考えています。
食事に興味がある人は、勉強を重ねてより健康で豊かになっていくのに対して、そうでない人との格差は広がっていく可能性があります。
大切なのは、個々人に合わせた「よりよい食事のためのメッセージ」
国が出すような食生活の指針は、全ての人に行きわたるようなものになりますが、食生活が個人によって大きく異なってくれば、それでは不十分です。
このような食生活の状況であれば、ここを工夫してみましょう、といったような個人の食生活には違いが大きいことを前提としたうえで、提案していく必要があります。
管理栄養士は地域に、顔が見える場所に増えてきています。保健センターなど公衆衛生を担う行政だけでなく、ドラッグストアや調剤薬局、歯科医院、保育所等に勤める管理栄養士により、個々人の生活環境に合わせた指導が行われることが期待されます。
さらには、食生活を手軽に評価して、個別のアドバイスできるようなアプリケーションが広く利用されるようになるよう期待しています。今でもダイエットアプリなどが利用されていますが、それはあくまでも関心がある人がアクセスしている状況です。
食生活をあまり気にしていない人でも利用できるアプリの仕組みをどのように作ることができるのか、詳しい方に教わりたいです。
*参考文献
DIET-RELATED DISPARITIES: UNDERSTANDING THE PROBLEM AND ACCELERATING SOLUTIONS