【アップデート】高齢 糖尿病患者さんの栄養・食事療法

高齢化が進むなかで、糖尿病をもつご高齢者も増えています。ご自宅で過ごされている方に栄養指導をしたり、高齢者施設で栄養管理をおこなう場合に、どこまで厳格に食事指導をすればよいのか、あるいは間食を控えていただければよいのか悩みながら関わっている管理栄養士さんが多いことと思います。

そこで、糖尿病をもつご高齢のかたに対する栄養指導でポイントとなる点を3つまとめました。

■エネルギー摂取量の決定

糖尿病診療ガイドライン2019では、高齢者の目標体重がBMI 22~25と示されました。

体重が、BMI 22~25の範囲内の場合は、それを維持できるようなエネルギー摂取量を設定するとよいでしょう。つまり、現体重にエネルギー係数(軽労作 25~30 普通の労作 30~35)をかけて算出します。現体重が BMIが22未満や25を超えるときは、22~25を患者さんに合わせて用います。

大切なのは、設定したエネルギー摂取量を随時見直すということです。高齢者施設に入所した糖尿病患者さんに、標準体重とエネルギー係数 25kcal/kgから求めたエネルギー量の食事を提供していると、体重が減ってくるということがあります。BMI22~25の体重の高齢者が体重を減らすことは望ましくありません。

■低血糖の予防

高齢糖尿病患者さんは、食後高血糖や低血糖がおこりやすいです。低血糖を起こしやすい薬剤を服用している場合は特に気を付けます。

低血糖は認知機能の低下や転倒のリスクを高める可能性があります。低血糖が認知症を引き起こすという方向だけでなく、認知症があるために摂食障害があり、食事量が不足するために低血糖が起きるということがあります。

また、高齢者におきやすい、うつや摂食嚥下障害による食事摂取量の減少も低血糖のリスクを高めますので、食事が大きなムラなく摂取できているかを確認し、できていない場合は食事のとりかたを指導する必要があります。

■フレイル・サルコペニアの予防

高齢糖尿病患者さんにおけるフレイルの出現は、ヘモグロビンA1cが7.6%のときに最もリスクが低くなる報告があります。ヘモグロビンA1cが6.9%と低かったり、8.2%と高い時にはフレイルのリスクが高くなるという、「Jカーブ」のグラフを描きます。

上述した通り、厳格な血糖コントロールによりヘモグロビンA1cは低くなっているが低血糖がよく起きている、という状態は認知機能に対しても、フレイルに対してもよくありません。

糖尿病はサルコペニアを引き起こし、サルコペニアは糖尿病を悪化させると考えられています。血糖コントロールだけではなく、筋肉量や筋力を含めた全身の栄養状態をみる必要があるのです。

ですので、患者さんの状態と使用薬剤により設定されているヘモグロビンA1cの目標値(7.0~8.5%)を参考にしながら食生活を評価します。

摂食嚥下能、消化吸収能の低下により、たんぱく質性食品の摂取がすすまず不足がみられていないか、体重が減少していないかを定期的に確認したいです。 その際には、低栄養の評価ツールであるMNA-SFなどを活用するのもひとつのアイデアです。

まとめ

高齢のかたへの栄養指導では、これまでの食生活へのなじみが深いこと、「変化」させることが若年者より難しいことを理解し、人生をどのように送っていきたいかという思いを汲むことが大切です。

患者さんやご家族、多職種とお話ししながら、患者さんが納得できる食生活が送れるようお手伝いしたいですね。