海外から見た日本食ー日本の栄養学をどう発信するか?
下の記事で紹介した本の著者である、イギリス人フードライター ビー・ウィルソンの本をもう一冊読みました。
ビー・ウィルソン著.堤理華訳.人はこうして「食べる」を学ぶ.原書房(2017)
人が生まれてから(いえ、胎児期から)どのように食べ方を覚え、親子関係や兄弟関係が、食べることにどのような影響を与えるか、また空腹との闘いや摂食障害についても、多くの研究や文献をもとに展開してきます。
その根底には、著者自身が両親の離婚、姉の摂食障害、思春期から20代の頃に自身の食事がコントロールできなかったこと、口蓋裂の息子さんの食べる量が少ないことを不安に思い強制的に食べさせようとしたことーの経験がある。
そして、著者は、それらの経験を乗り越えて、よく食べて、適正な体重を維持している。
様々な経験を通して得たやさしさと、自分にとって快適な「食べかた」を手にした幸せが文面から強く感じられる。
彼女がこの本の最終章で、日本食のすばらしさ(羨望)を書いている。
それまでの章で、一度見についた食べ方の習慣を変えることの難しさが書かれているが、「個人単位でも、国単位でも、食べ方を変えて、より幸せで健康になれるよ。その例が日本だよ」というメッセージでこの本は終わっているのである。
日本食はすばらしい。
でも、日本食は昔からすばらしかったわけではない。
1.明治維新後の肉食奨励、2.戦前の軍隊の栄養改善、3.戦後の食糧難とアメリカからの支援物資による折衷料理
この3つが日本食が変わるポイントだと指摘している。
その後豊かになった日本人は、たんぱく源となる食品(肉、魚、大豆、卵)を食べられるようになり、外国の料理を幅広く取り入れた。
しかも、そのまま取り入れるのではなく、味や量、献立の組み合わせは、日本流にアレンジした。
これが、今の日本食(日本型食生活)に至ったということ。
日本が変われたのだから、世界の他の国や人々も変われるよ、だから、いい食べ方を身につけていこう
という強いメッセージで締めくくられるのである。
最終章に至るまでの内容(子供がどうやって食べることを学ぶか。家族の関係がどう影響するか)も、毎日子どもにご飯を食べさせている立場として、とても興味深かった。
同時に、海外から見た「日本型食生活」についての記述がさらに新鮮だった。
日本から、日本型食生活、そしてそれを手に入れる過程に関して、もっと世界に発信できるのではないかと思う。