結局のところ、納豆は身体にいいの?【前編】

おいしくて、安くて、調理の手間がかからない納豆は、日本で最強の加工食品ではないでしょうか。私は、修士論文と博士論文を納豆をテーマに書いたこともあり、いつも気になる存在です。もちろん毎日食べています。

簡単に大学院での研究を紹介します。日本食に欠かせない白米と組み合わせたときに、血糖値を抑制する食材を探すなかでお茶や乳製品など色々と試しましたが、ダントツで血糖値を抑えたのが納豆でした。

そこで、健常人と糖尿病予備軍の方に、試験食①(ごはん、ゆで大豆、ブロッコリー、じゃがいも)試験食②(ごはん、納豆、オクラ、長いも)を食べてもらい、血糖値と血中インスリン・遊離脂肪酸を測定しました。結果、試験食②は試験食①に比べて、血糖値と血中インスリンを統計学的有意に抑えました。

その理由としていくつかのメカニズムが考えられました。納豆、オクラ、長いもに含まれる粘りをもつ物質が食事全体の粘りを生み出すために、胃から小腸へ移動する速度が下がる。その結果、小腸で食事中の糖質が吸収されて血中に出ていくのも遅くなるということです。あるいは、粘りをもつ物質が小腸での糖質吸収を阻害したかもしれません。

次に、糖尿病予備軍の方に、試験食①か②を朝食として2週間食べてもらい、その後影響を取り除く期間を経てから、もう一方の試験食を朝食として2週間食べてもらいました。結果は、試験食②を摂取した後は、開始時に比べて「インスリン抵抗性指標」(インスリンの作用がうまくいっているかどうかを示す)が改善していました。また、血清総コレステロール・LDLコレステロールが、試験食①を食べたときよりも低下しました。さらに、酸化ストレスの指標も改善する傾向がみられました。

インスリンの作用がよくなった理由として、朝食に血糖値とインスリンを抑制したことで、昼食以降の血糖値も改善する”セカンドミール効果”により昼食以降の糖代謝にも影響を与えた可能性があります。また、すでに報告されている納豆のコレステロール低下効果も同時に得られたと考えました。

これらの研究から、納豆が糖代謝と脂質代謝の両方によい影響を与えるかもしれないということが分かりました。

文献