「一汁三菜信仰」からの脱却

毎日の食事作り。仕事と子育ての両立をするなかで、いつからか苦行に感じるようになってきました。料理やお菓子作りは好きだったはずなのに、それが「作業」になって「こなす」繰り返し。時間がない、冷蔵庫にある食材だけで食事を仕上げないといけないという状況で、まさに「サバイバル」のための食事作りでした。

それを笑い飛ばしてしまえばラクなのですが、それができない辛さがありました。毎日新鮮な食材を買い物に出かけ、時間をかけて料理をし、おやつは手作りーという典型的な専業主婦家庭で育ったため、それが標準仕様として私の中にあります。さらに、栄養学を専門とし食事の重要性を理解するがゆえに、きちんとした食事を家族や自分のために準備しなければいけないと自分で決めていました。

子どもが一人のときはワンオペ育児でも何とかなったのですが、二人になって職場復帰した後は、どうしても思うような食事が用意できなくなりました。それが自分にとってとても負担になっていました。そんなとき出会って救われた本が、土井善晴さんの「一汁一菜でよいという提案」です。

土井さんのことは、もともとファンで、レシピ本も何冊かもっていました。上品な関西弁の語り口と清潔感のある風貌、そしてセンスと温かみのある料理が大好きです。「一汁一菜でよいという提案」はレシピ本というよりは、食事をこう考えませんか、というまさに提案本です。

おおざっぱにいうと、日本の食事にはハレとケがあり、毎日がハレの食事でなくてもいい。日常の食事は、ごはんと具だくさんのみそ汁、おかず一品でいいんだよ。という内容です。そうして、ごはんやみそ汁をどうおいしくいただけるかを説明してくれます。みそ汁にウィンナーやハムを入れてもよいという斬新さも(実際においしかったです)。

それまでは、汁ものもみそ汁ばかりではよくないと思い、中華スープ、コンソメスープ、コンソメスープ、トマトスープなどを作っていましたが、平日の夜はみそ汁に限定することにしました。ただし、みそは上質なものを何種類か用意して気分をかえる。

また、メインのお皿以外に用意していた小鉢ものも省略しました。小鉢に入れるような食材をみそ汁にいれてしまったり、おかず一品に簡単に添えたりして終わりです。

この型でいいーと吹っ切ってから、食事作りが本当にラクになりました。こどもが、みそ汁を一口飲んでホッとしたように「おいしい」と言うときは、これでいいんだなと思えます。

「きちんとした食事を用意しなければ」とプレッシャーを感じている人とこの提案を共有したいですし、食事作りが面倒だからとカップ麺を食べてしまうひとには、ごはんと具だくさんみそ汁だけ用意しようと提案したいです。

今後は、この一汁一菜が工夫次第で、適切な栄養素要求量をみたすことができるということを管理栄養士の視点で検証していこうと思っています。土井先生の本をぜひ読んでみてください。