独自調査:外食・中食で使われている揚げ油

炭水化物を制限する食事療法について検討するなかで、炭水化物が減ると、シーソーのように増える「脂質」について気になりだしました。そこで、2019年度から科学研究費助成事業で「糖尿病合併脂質異常症に対する最適な脂質摂取量および脂肪酸組成の解明」をテーマにしています。2年前になりますが、ゼミ生と一緒に外食や中食で使用されている揚げ油の種類を調べました。

外食店、スーパー、コンビニ、総菜・弁当屋、パン・ドーナツ屋、冷凍食品メーカーについて、お店やお客様センターに電話して聞きました。「企業秘密」や大まかに「植物油」としか返答いただけないところもありましたが、大方のお店は教えてくれました。私も天ぷら店で食事をしたあとに油の種類を聞くと、空き缶を持ってきて見せてくれました。

結果から「パーム油」がよく使われていることがわかりました。例えば、外食店は32店のうち詳細が分からなかった5店を除いた27店のうち、14店で(5割強)パーム油が使われていました。特に、フライドポテトを提供したり、揚げ物をメインとしたお店では使用していることが多かったです。スーパー・弁当屋でのパーム油の使用は2~3割でしたが、コンビニでは7~8割でした。(注:パーム油単独あるいは調合油の一部としてパーム油を含む場合を全て含めている。)

パーム油はアブラヤシの実からとれる植物油ですが、他の植物油に比べて飽和脂肪酸を多く含むという特徴があります。スーパーの油売り場には並んでいませんから一般家庭で使用されることはなく、ほとんどが外食や食品メーカーで使われていると考えられます。

日本における植物油供給量を調べたところ、パーム油はなたね油に続き2番目でした。冷凍食品にも使用されているので、気づかないうちに摂っている油ということになります。

【下表】日本の油種別植物油供給量(2019年):一般社団法人 日本植物油協会ホームページ。国内で搾油したものと、油で輸入したものの合計(単位:千トン)

なたね油1,052
パーム油779
大豆油489
パーム核油74
こめ油100
とうもろこし油81
オリーブ油73
やし油53
ごま油56
ひまわり油28
綿実油8
サフラワー油7
その他の油脂71
合計2787

まとめ

栄養指導では「揚げ物」に関してお話しすることがよくあります。家庭ではなたね油や大豆油が使用されるのに対し、外食や中食ではパーム油が使用されていることを念頭に置いて、飽和脂肪酸の摂取状況を評価し指導に反映していくことが大切ですね。