食品に含まれるヒ素とのつき合いかた:分散食べのすすめ

2004年、英国食品規格庁(Food Standards Agency、FSA)は、ひじきを食べないように英国民に対して勧告を出しました。ひじきに発ガンリスクの指摘されている無機ヒ素が多く含有しているとの結果が得られたためでした。

アジアから輸入される見慣れない食物であるひじきにヒ素が多く含まれるというのを知るのと、伝統的に食べ続けてきた日本人がひじきにヒ素が多く含まれているのを知るのでは、受け止め方は違うことでしょう。

日本の食品安全委員会によれば、通常の食生活における摂取で健康に悪影響が生じたことを明確に示すデータは現在のところないことを示したうえで「一部の日本人で無機ヒ素の摂取量が多い可能性があるため、特定の食品に偏らず、さまざまな食品をバランスよく食べることが重要」としています。食品中のヒ素に関するQ&A(農林水産省)

ひじきを水戻しやゆで戻しする過程で、多くのヒ素が除去されるという研究がおこなわれているようです。

私は、外食やお弁当でひじきが出てきたら喜んで食べますが、家ではこの数年、調理していません。ひじきを食べないと摂取できない栄養素もないと思われるので、あえてひじきを食べないというところです。ざるの目にひじきが詰まって、洗うのが大変(悲)なことの方が大きいかもしれません!

コメにもヒ素が含まれていますが、これは食べないわけにはいきません。

食品であろうともゼロリスクばかりを期待できるわけではないので、ゼロに近いリスクは許容せざるをえません。

コメのヒ素は、ぬかに含まれるので、玄米より白米、普通米より無洗米で少ないです。

ここで、玄米と白米の関係を考えます。

玄米は、食物繊維やビタミン・ミネラルを多く含みます。食後の血糖上昇や血中コレステロール低下作用なども報告されています。

これら多くの有益性がある一方で、ヒ素を含むという難点もあります。

このように、食品の健康への影響は多面的であるため、100%よい食品・悪い食品とはいえないことが多いです。

極端にいえば、脂質は、太っている人には悪ですが、太りたい人にはよい栄養素です。

対象者によって、また何に影響するのかによって、健康への影響の結論が異なるわけです。

じゃぁ、何をどう食べればよいのか困ってしまう方には、「分散」した食べ方をお勧めします。

金融商品を買うときに、銘柄や地域、投資時期を分散させてリスクを下げつつ利益を上げるのは常套手段です。

それと同じように、食品についても「ばっかり」食べをせずに、玄米も食べれば、白米も食べる、海藻ばかり食べずに、他の野菜もまんべんなく食べるということです。

結論がとてもありきたりになってしまいましたが、「何かを食べれば健康になる」というものはない以上、この「分散食べ」がもっとも安心で、健康への効果がえられやすいのではないかと考えています。