お酒をやめたらどうなる?卒酒のススメ②~40代男性(経営者)の場合

前の記事↑書いた通り、「断酒」は、よほどの量を飲んでいたり、お酒の飲み過ぎが生命の危機に直結するような状況でなければ、強く勧めにくいといえます。しかし、日々の「何となくの不調」や健診で指摘される細かな事項が、アルコールに由来していることは少なくありません。そこで、卒酒によりよい結果を得られた事例について紹介します。

なお、本稿で取り上げた事例は、可能な限りご本人の了承を得て、かつ必要に応じて個人が特定されないよう小修正を加えて執筆するものです。

事例

40代、男性、経営者。

パーソナルトレーニングを受けていて大胸筋は鍛えられているものの、腹部の脂肪が落ちない、食事をそれほど多く食べていないはずだが体重が減らないという悩みをお持ちでした。身長 174㎝、体重 79㎏(BMI 26.1 kg/m2)。

人間ドックでは

肥満

高血圧

血中LDLコレステロール・中性脂肪高値

尿酸高値

肝機能高値

を指摘されているとのこと。責任の重い判断を数多く迫られる激務であり、高血圧はストレスも影響していると考えられました。

食事摂取状況の評価

朝食:おにぎり、納豆、プロテイン

昼食:外食(和食系の定食や麺類が多い)

夕食:自宅での食事(主食の米飯は少なくしている)※外食もあり

就寝前:ビールと簡単なおつまみ

昼食のカロリーが日によって高くなるのが気になりますが、確かに、3食の食事量はそれほど多くなさそうです。

栄養食事アドバイス

この事例における問題の源流は、就寝前のアルコールにあると考えられました。

〇 アルコール→エネルギー源となり、肥満につながる。→血中LDLコレステロール・中性脂肪の増加や高血圧

〇 アルコール→体内での中性脂肪合成を促進させる。→腹部肥満・血中中性脂肪の増加

〇 アルコール→血中中性脂肪の増加。

〇 アルコール→尿酸の排泄を低下させ、血中尿酸値を増加させる。

〇 アルコール→肝機能を低下させる。

早い時間から飲むと時間のロスが大きいからと、就寝前に飲んでおられたのも、太りやすさにもつながっていたと考えられます。

お酒をやめることでで、複合的に体重や検査値が改善する可能性を説明し、卒酒をお勧めしました。栄養指導の時点において、既に「お酒をやめたほうがよいのかもしれない」という意識をお持ちでした。そのタイミングで、お酒が単にカロリー源となり太る原因となるだけでなく、体内で中性脂肪を合成したり、尿酸の排泄を低下させたりする作用があることを説明させていただくことで、アルコールの影響を正しく認識してくださり、卒酒の決意をされました。

加えて、植物性食品からのビタミン、ミネラル、抗酸化物質の摂取が不足していると考えられたため、朝食に果物や野菜を足すこと、また、減塩や飽和脂肪酸・食事性コレステロールの摂取減、外食でのメニューの選び方や食べ方も併せてアドバイスしました。

栄養食事アドバイスの効果

 その後の変化をご紹介します。

10日で「睡眠、体調、時間、コストの面でメリットばかりです」とご連絡あり。

3か月で、体重4㎏の減量

5か月後の人間ドックで、中性脂肪、尿酸値、肝機能の数値改善

これらの効果は、卒酒なしに食事の修正だけでは、成しえなかった可能性が高いです。また、軒並み数値が下がっただけでなく、疲労感が減り「体調がいい」と自覚できるという変化を実感されたことが重要です。顧客と従業員に対して大きな責任をお持ちである経営者の自己管理力を見せていただいた事例でした。

40代からは、卒酒を1つの選択肢に

このように管理栄養士による栄養指導では、納得できる説明のもと、食事改善を行う決意をしていただき、それを継続するための支援をしていくことが重要です。今回の事例のように、その効果を実感できるのが何よりの継続の駆動力となります。卒酒は、その効果・影響を実感しやすいため、食事改善や生活改善を本気化させるのにとても有効だと考えます。

残りの人生を、健康に豊かに過ごしていくために、卒酒を1つの選択肢として考えてみることをおすすめします。