糖尿病食のPFC(たんぱく質・脂質・炭水化物):糖尿病診療ガイドライン2019
以前の記事で、糖尿病患者さんが治療をするにあたっての目標体重と、そのためのエネルギー量について紹介しました。今日は、その次のステップである、エネルギー産生栄養素比率(以下PFC比率)について考えます。
医師から出される栄養指導依頼書に、エネルギー量だけでなくPFC比率まで書かれていることは少ないのではないでしょうか。また、病院食の「糖尿病食」のPFC比率が長年変更されていないということもあるかもしれません。
患者さんの食生活の中でPFCまでしっかり守ってもらうことは難しいですし、病院食の献立設計においても献立の展開の関係などから、頻繁にPFC比率を見直すのは現実的ではありませんよね。
患者さんに、たんぱく質もしっかりとって、油は控えましょう、と話しても実際患者さんが摂取しているPFC比率を把握している管理栄養士さんはそれほど多くないのではないかと思います。(秤量法による食事調査や食事摂取頻度調査を定期的におこなって確認している施設もあります、念のため)
だから、PFC比率をしっかり指導しましょう!と言いたいのではありません。むしろ、適切なPFC比率を定める十分な科学的根拠は、やっぱりないんですよねという話です。
■たんぱく質
たんぱく質比率は20%以下に
たんぱく質比率が20%を超えた場合の長期的な安全性は確認されていない。たんぱく質の過剰摂取は、糖尿病発症リスク・心血管疾患および脳卒中の発症率・死亡・がん死に関係する可能性が報告されている。ただし、たんぱく質性食品に同時に含まれる脂質の摂取増加が影響している可能性がある。
■脂質
脂質の比率が25%を超える場合は、飽和脂肪酸を減らし不飽和脂肪酸を増やすなど脂肪酸組成に留意する。
飽和脂肪酸は糖尿病の発症リスクとなり、不飽和脂肪酸は発症リスクを低減する。魚やえごま油などに含まれるnー3系多価不飽和脂肪酸の効果ははっきりしていない。
■炭水化物
炭水化物比率は50~60%とする。
糖尿病患者を対象に、炭水化物を制限した研究の多くで、炭水化物だけでなくエネルギー摂取量も減少している。よって、炭水化物のみを減らす効果は明らかになっていない。
まとめ
糖尿病診療ガイドライン2019では、PFC比率について新たな言及はありませんでした。PFC比率研究の難しさは、PFC比率のパターンが無数にあるものの、研究での群数は限られるため、結論が出しにくいこと。また、あるPFC比率を指導して経過を追っても、指導通りのPFC比率を継続実践できないことなどがあります。ちなみに、もし親しい人が糖尿病になったらP:F:C=18:30:52あたりを勧めたいです。