炭水化物制限食(低炭水化物食)のダイエット効果をみるときに注意すべきこと

低炭水化物食が体重減少や糖尿病などの生活習慣病の改善に有効である可能性が指摘されています。短期間の体重減少に対してはある程度認められていますが、長期間の身体への影響について一貫した結論が出ていないのが現状です。

低炭水化物食研究の結果を解釈するのは、とても難しい!

低炭水化物食の効果を調べるにあたり、注意すべき点を紹介します。

1.炭水化物が減った効果なのか、エネルギーが減った効果なのかわからない

炭水化物を制限すると、その分脂質やたんぱく質が増えてエネルギー摂取量は変わらないーということはあまりありません。脂質やたんぱく質は増えることはありますが、総エネルギー摂取量も減ることが多いです。

ですので、炭水化物を減らしたから体重が減ったのか、エネルギー摂取量が減ったから体重が減ったのかがはっきりしないのです。

ただし、炭水化物を減らすことはエネルギーを減らすことにつながりやすいというのは事実です。

2.炭水化物制限といっても、どの程度の制限なのかが、研究によってバラバラ

非常に厳しい炭水化物制限であるアトキンスダイエットから、北里大学北里研究所病院の山田悟先生が提唱する「ロカボ」のように緩やかな制限まで、制限の度合いに幅があります。

当然ながら、制限の度合いによって結果や解釈は違ってきます。

欧米では日本に比べて標準的な炭水化物割合が低い(脂質が多い)ため、研究で「低炭水化物」とするには、かなり低くするものが多いです。標準的な炭水化物摂取量は、国や地域によって異なるため、「制限」をイメージする基準も違ってきます。

3.炭水化物の「割合」なのか「量」なのか

通常60%Eの炭水化物を割合としてとっている対象者に、40%Eとなるように栄養指導したものの、エネルギー総量が減ったので指導後の割合は50%Eとなるーというように、炭水化物摂取の割合は、分母であるエネルギー摂取量と関連します。

また、エネルギー摂取量の多い欧米における炭水化物30%Eと、欧米よりエネルギー摂取量が少ない日本における炭水化物30%Eを同じととらえてよいのかという問題もあります。炭水化物の絶対量が違うわけですから。

炭水化物摂取量を「割合」で議論するのか、「絶対量」で議論するのかを明確にする必要があります。

4.炭水化物が減った分、増えている栄養素の影響をどうみるか

1.で、炭水化物が減った分と同じ量の脂質、たんぱく質は増えないと説明しました。

しかし、対象者を施設に入院させて、完全に計算された食事のみを与えて身体を評価する研究があります。その場合は、エネルギーを全く変えずに、炭水化物だけ減らすことが可能です。

この類の研究の問題点は、炭水化物が減った影響をみているのか、その分増えたたんぱく質や脂質による影響をみているのかわからないということです。

低炭水化物食の研究をするつもりだったのに、単に高脂質食を評価したことになっているという可能性もあります。

■まとめ

このように、炭水化物制限食の研究データを読み解くうえでは注意すべき点がいくつかあります。

結果や結論だけ読んで鵜呑みにせず、研究方法をしっかり調べて解釈する必要があります。