”食べているものを人に見せるのが恥ずかしい”という気持ちについて

「何をどのくらい食べているか」を他者に知られるのは恥ずかしい、という気持ちをもつ人が少なからずいます。

食べているものは、非常に個人的な情報です。

なぜならば、食べているもので、その人の生活環境や生き方などが垣間見えるからではないでしょうか。

なぜ、その食事を食べているのか?

日本が貧しかった時代では、食事の優劣は「白米が食べられるか、おかずが何品つくか、おなか一杯食べられるか」といった、”豊かさ”により主に規定されていたように思います。

しかし、加工食品が簡単に手に入り、外食や中食の選択肢がある現代においては、より複雑であり、

・適切な食事をとるための知識や意思があるかどうか(自己コントロール力

・料理をする生活の余裕があるかどうか(生活の質

・食に対してどのような教育やしつけを受けてきたのか(育った環境

・幅広い食材を使用できるか(経済力

などが食事に反映する可能性があります。

自分の食事は普通?

他の家庭の日常の食事(お呼ばれ、ではなく)を見る機会は少ないため、自分の食事は「普通」と思っていることも多いですが、

「あんまり自慢できる食生活を送っていないな」と感じつつ忙しい毎日を過ごしている方も多いです。

私は病院栄養士時代に、多くの「3日間食事摂取量調査(秤量法)」を実施してきて、患者さんの食事を評価してきました。子どもの食事でも、即席めんや菓子パンだけで昼食を済ませていたりすることにはじめは驚きました。

また、研究では食事調査で写真撮影を加えることも多いので、より対象者の食事内容が詳しく分かります。ただ、研究に参加してくださるかたは、意識の高い方が多いので、きちんとした食事が多く、びっくりしたような記憶があまりありません。

太っている人ほど、食事調査の誤差が大きい

太っている人が申告する食事内容は、事実よりも少ないことが数々の研究で明らかになっています。

これには、意図的に少なく申告する場合と、無意識に食べていたものを申告し忘れる場合があります。

管理栄養士は常に、この「過少申告」を意識して食事の聞き取りをおこなう必要があります。

真の食事内容を知ることは、本当に難しいのです。

3500枚の食事写真を撮影した調査

田中葉子ら「それでも好きなものだけ食べさせますか」日本放送出版協会、2007

小学生の食事写真がたくさん載っている書籍を見つけて、とても面白かったです。

朝食に菓子パンとジュース、たこ焼き、ベビースターラーメン

夕食にハンバーガーセット、米飯+菓子パン+大根の煮物という不思議な組み合わせ などなど。

びっくりすることも多いですが、これが真の食事風景なのだと感じました。

また、子どもたちが描いた「家族が食事をしている絵」「あなたの家族のいつもの食事の様子の絵」がたくさん載っています。

子どもたちが、食事をとらえている様子が多様であり驚かされます。

食べること、子どもの食事に興味のある方は、ぜひ読んでみてください。