知らないうちに食べていた!パーム油の健康への影響
外食や中食での揚げ物にはパーム油が多く使われてます(「独自調査:外食・中食で使われている揚げ油」)。
日本では、パーム油は家庭の調理で使われることはあまりなく、業務用の調理油、冷凍食品やパン、お菓子、インスタント麺、マーガリン、ショートニングなどに使われています。
日本に供給される植物油の第2位がパーム油。しかし、原材料表示には「植物油」としか表記されないことも多いので、
「知らないうちに食べていた!」という実感です。
パーム油は、インドネシアとマレーシアで世界全体の生産量の80%が生産され、世界中で広く使われています。
その理由は、単位面積当たりの産生量が多いという、その産生効率のよさ(=コストが低い)といところにありそうです。
また、パーム油は調理特性としてもすぐれています。
加熱や酸化に強いので、揚げ物(揚げ菓子や揚げ麺を含む)に向きます。時間がたってもサクッと感が持続します。
固形にしたパーム油は口の中で溶けるので、チョコレート菓子やアイスなどにも使われます。
安くて、使い勝手のよいパーム油が広く使われる理由がわかります。
しかし、栄養学的には「飽和脂肪酸(パルミチン酸)」が多いのが特徴です。
飽和脂肪酸の摂取が増えると、血中LDLコレステロールが増加することが知られており、血中コレステロールの増加は、動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳卒中)のリスクとなることが知られています。
大丈夫なの?と気になりますね。
2003年に、WHOがパーム油の消費は心血管疾患のリスクをあげることを報告しました。
しかし、その後いくつものレビューが実施されましたが、健康への影響はよい方にも悪い方にもはっきりわかっていません。
理由として、パーム油だけの影響を評価するのが難しいことがあります。パーム油を多く摂取する人は、肉や乳製品の脂質も摂取しており、パーム油だけの影響を切り取ることができないことがあります。
また、パーム油の飽和脂肪酸(パルミチン酸)は、肉類に含まれるものとは身体への影響が異なり、血中LDLコレステロールの増加やそれに引き続く動脈硬化性疾患を起こしにくい可能性も指摘されています。
日本人がこれほど多く摂取している植物油ですから、安心して摂取できる油であることがしっかり示されることを期待しています。
(文献)
- Fattore E et al. Palm oil and palmitic acid: a review on cardiovascular effects and carcinogenicity. Int J Food Sci Nutr. 2013;64(5):648-59.
- Mancini A et al. Biological and Nutritional Properties of Palm Oil and Palmitic Acid: Effects on Health. Molecules. 2015 20(9):17339-61
- Ismail SR et al. Systematic review of palm oil consumption and the risk of cardiovascular disease. PLoS One. 2018;13(2):e0193533.