医師は管理栄養士の栄養指導をどう評価しているのか?
糖尿病診療ガイドライン2019の食事療法の項に、管理栄養士による指導のCQがあります。
CQ 3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士による指導は有効か?
【ステートメント】
●食事療法の実践にあたって、管理栄養士による指導が有効である
[推奨グレードA]
糖尿病診療ガイドライン2019
管理栄養士による指導による体重減少やHbA1cの改善などを認めた研究を引用しながら、有効であるとしています。
しかし、最後の段落に下記の記述があります。
近年、わが国においても食習慣は多様化し、一律な食事指導をしても実践が困難になっている。ただ単に数値のみを提示して、他の選択肢を認めないような指導に固執すれば、患者を不適切な食事療法に走らせることになる。このようなことを避けるためには、患者の理解度を評価しつつ、患者の意向を受け入れ、実効性の高い柔軟な対応が望まれる。
糖尿病診療ガイドライン2019 p.33-34
この記述がなされた背景は分りませんが、単に時代の変化に対応した指導が必要であるというだけではなく、栄養指導の現場の問題点を捉えての記述のように推測できます。
栄養指導を依頼した医師は、管理栄養士の指導をどう評価しているのでしょうか。
栄養指導室で、患者さんが主治医のことを話すように、患者さんは主治医に栄養指導のことを話しているはずです。
患者さんからの栄養指導に関する話を聞いた主治医の行動には、いくつかのパターンが考えられます。
- 継続して栄養指導を依頼する。
- 栄養指導を依頼するのを中止する。
- 栄養指導の内容について、管理栄養士に質問したり要望したりする。
主治医は、効かない薬の処方を止めるように、効かない栄養指導の依頼は止める可能性があります。
病院管理栄養士として勤めていた時、患者さんの来院ごとに栄養指導を依頼してくれた先生は、「患者さんが調味料の使い方がよくわからないと言ってるけど。きちんと指導してよ」「食事調査の計算値がおかしいと、患者さんが言ってるけど?」と、電話がかかってきたり、直接訪問して伝えてくださいました。
厳しい先生でしたが、栄養指導が必要であるという前提に基づいて、管理栄養士のレベルアップを求めてくれました。そのおかげで少しは成長できたと思っています。
しかし、一般的には、そのような要望をせずに栄養指導の依頼を止めるというケースも多いかもしれません。
患者さんの声をふまえた医師からの栄養指導の評価をきき、改善できるような有機的な連携が欠かせないと思います。