血中アディポネクチンを増やす食事はあるのか?【悲報あり】
アディポネクチンは、脂肪細胞で産生され分泌されるタンパク質で、アディポサイトカインの一種です。
脂肪細胞で産生されるのに、脂肪の多い肥満者の血中アディポネクチン濃度は低い。
アディポネクチンは、炎症性サイトカインや酸化ストレスを減少させ、それによりインスリン抵抗性を改善するとされています。
(ちなみに、インスリン抵抗性というのはインスリンというホルモンが作用しにくくなっている状態で、2型糖尿病や脂質異常症などを引き起こすメタボリックシンドロームの基礎となっている病態です。)
血中アディポネクチン濃度が低下することは、動脈硬化症や心血管疾患の危険性と関連すると考えられています。
であるならば、血中アディポネクチン濃度を増加させたい!!
食事で血中アディポネクチン濃度を増やすことはできるのでしょうか?
2019年のレビューと2016年のRCT(無作為化比較試験)から紹介します。
1.低エネルギー食
体重が減ると、血中アディポネクチン濃度が増えます。アディポネクチン濃度の上昇には、7~10%以上の体重減少が必要とされています。
よって、体重を減らすことのできる低エネルギー食は、血中アディポネクチン濃度を増やします。
2.ポリフェノール、ビタミン、脂肪酸
文献1では、下記の栄養素・栄養成分が血中アディポネクチン濃度上昇によい影響を与えているとしていますが、根拠としている論文のなかには小規模のRCTもあり、解釈には注意が必要です。
- レスベラトール
- アスタキサンチン
- 混合カロテノイドサプリメント
- トマトジュース
- βカロテン
- βクリプトキサンチン
- 抗酸化サプリメント(ビタミンE、C、βカロテン)
- ω3系脂肪酸
3.エネルギー産生栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物, P:F:C)の割合
文献2では、エネルギー産生栄養素比率を変えた、低脂質高炭水化物食 (P:F:C; 18:18:64)と中程度の脂質食(P:F:C; 18:36:46)のいずれかを、被験者に自宅で食べてもらい、2週間ごと6週間まで体重や血中アディポネクチン濃度などを測定しました。
アメリカの研究なので、中程度の脂質食(P:F:C; 18:36:46)となっていますが、日本だと高脂質食とみなされます。
体重の変化の影響を除去した解析の結果、低脂質高炭水化物食を食べたときの血中アディポネクチン濃度は中程度の脂質食よりも低い値となりました。
■まとめ
文献2では、低脂質食が中程度脂質食に比べて、血中アディポネクチン濃度に不利な結果を示しました。
しかし、PFC比が異なる食事は体重に異なる影響を与えますので、血中アディポネクチン濃度への影響は、PFCの違いによるものか体重減少に違いによるものか評価するのが難しいのです。
体重減少の影響を切り離して、食事の組成とアディポネクチンの関係を明らかにしようとする研究論文は他にもありますが、いまいち明確な結果が出ていません。
したがって、今のところ「体重を減らすことのできる食事がアディポネクチンを増やす」としか言えなさそうです。