低脂質食は低炭水化物食よりも体脂肪を減少させる(思わず拝む論文シリーズ)
6日間の低炭水化物食と6日間の低脂質食を比較すると、低脂質食を食べたときに、体脂肪がより減少したーという論文です。
この論文を初めて読んだとき「ここまでできるのか」と驚愕しました。さすが、NIH(アメリカ国立衛生研究所)の研究で、研究デザインがしっかりしているし、方法が徹底しています。
目的は、低炭水化物食と低脂質食のどちらが、体重やエネルギー消費量、脂質代謝によい影響を与えるかという、至極シンプルなものです。
しかし、このシンプルな目的がしっかり研究されたものが少ない。
なぜなら
- 低炭水化物食(あるいは低脂質食)を指導する研究では、その食事が守られることが少なく、本来評価したかった食事の組成が身体に与える影響をみることができない。
- 研究者が意図する食事を対象者にとらせるために、すべての食品を支給して自宅で食べてもらう場合でも、指示通りの食事となっていないことが多い。
- 食事の違いによる生理学的効果を評価するには、対象者を入院させて食事研究をすることが必要だが費用がかかり、被験者数も少なくなりがち。
だからです。
この論文は、対象者を入院してすべての食事を厳密に管理し、対象者数も19名とこの類の研究としては多いです。
対象者は2-4週間間隔をあけて2回入院します。1回の入院は11日間で、初めの5日間は標準的な食事をあたえられ、残りの6日間に試験食(低炭水化物食または低脂質食)を与えられます。1回の入院で5回エネルギー代謝測定室に入り、二重標識水法も実施する徹底ぶり。
食事のPFC(たんぱく質:脂質:炭水化物の比)は以下の通り。低脂質の組成がかなり極端に感じます。
- 標準的な食事→14.5: 35.3: 50.2
- 低炭水化物食→20.9: 50.1: 29
- 低脂質食→21.1: 7.7: 71.2
対象者が入院している間の食事管理のしかたに注目です。面会に監視がつくのが面白い!
- 代謝病棟の外に食品を買いに行ってはいけない。
- 病棟で提供される食品以外を食べてはいけない。
- 提供された食事が(好き嫌いなどで)食べられない時は、研究栄養士にすぐに連絡して、他の食品をもってきてもらう。
- 対象者に面会しに来た人から食事や飲料を受け取らないよう、面会には研究スタッフが同席する!
- 食事は共用エリアか、ドアの開いた病室で食べる!
- 全ての食事トレイは食後に確認されて、食べ残しは栄養士によって計量、計算されて、必要であれば後に調整する。
- 運動量を毎日一定にする。
結果としては、両方の食事で各種パラメーターの改善がみられました。1日当たりの体脂肪の減少については、低炭水化物食で平均53g、低脂質食で平均89gであり、この結果は数理モデルを用いた分析結果と合致したとのこと。
どうやら、低脂肪食のほうが低炭水化物食よりも、体脂肪を減らす可能性が高そうです。